理事長挨拶

国に課せられた最も大切な責務とはなんでしょうか。
それは、国の独立と国民の生命、財産を守ることです。それが叶わなければ、国民の権利や豊かな生活を保障することはできません。

日本国憲法の前文は、「われらは、・・・国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」とうたっています。この理念を尊重すれば、私たちがとるべきは、利己的な「一国平和主義」の道ではありません。日本国民はもとより、各国の人々の幸せの基盤となる世界の平和づくりに寄与していかなければなりません。私たち日本人と我が国が歩むべきは「積極的平和主義」の道なのです。とりわけ、東アジアやインド太平洋地域における我が国の役割は大きなものがあると思います。
世界の平和に貢献していくには、まず自国の守りを整えていくことが肝要です。今、我が国をとりまく安全保障環境は厳しさを増しており、防衛・安全保障分野における宇宙利用の重みはますます大きくなる一方です。

平成20年(2008年)5月、国会で宇宙基本法が制定されました。これにより、我が国の宇宙政策は、それまでの研究開発一本槍から、科学技術、産業振興 そして安全保障の3本柱で構想されるべく生まれ変わりました。それからおよそ10年が経ち、宇宙政策をとりまく環境は大きく変わりました。

平成25年(2013年)12月には、我が国防衛の基本文書である「国家安全保障戦略」が閣議決定されました。この国家安全保障戦略は「積極的平和主義」を掲げ、宇宙分野について「宇宙空間の安定的利用の確保及び安全保障分野での活用の推進」の方針を打ち出しました。平成28年(2016年)4月には、「宇宙基本計画」が閣議決定され、「宇宙の持つ潜在力を我が国の安全保障能力の強化や国民生活の向上等に最大限活用するとともに、宇宙を活用して国際社会における我が国のリーダーシップを強化し、人類・社会全体の安全と安定、繁栄と発展の実現に貢献していく」ことを宣言しました。日米首脳会談や防衛・外交閣僚による日米安全保障委員会(2プラス2)など、多くの外交の場で、宇宙やサイバー分野の問題が重要なテーマとして取り上げられるようにもなっています。
そこで私共は、我が国が宇宙を活用した防衛・安全保障能力を高めていくことに対して貢献したいと考え、一般社団法人「日本宇宙安全保障研究所」を発足させることに致しました。宇宙政策と安全保障政策を担う政府に対して、時代に先駆け、かつ実現可能な政策を積極的、継続的に提言していきたいと考えています。
当研究所は、我が国の国益を踏まえ、日米同盟を重視します。自由と民主主義、基本的人権という共通の価値観を有する同盟国米国および友好国との関係を密にしながら、共に歩んでいきたいと思います。
私共の取り組みが、世界平和に必ずや寄与すると確信しています。
皆様のご支援とご協力を心からお願いするものであります。

2018年9月

一般社団法人 日本宇宙安全保障研究所

理事長 今津 寛