発信日:令和6年7月26日
内容:第2回分科会の実施報告と次回のご案内
発信者:分科会幹事代表 三堀 隆(主席研究員)
"MD分科会 R6第2回分科会の実施報告と次回予定等"
第2回MD分科会(7/25)を、一般会員4名、研究所側及び講師の3名、計7名の参加のもと、以下の通り実施しました。
今回は、中国軍事問題研究家の田中三郎さんに講義をお願い致しました。田中三郎さんは、軍事情報専門誌の月刊「軍事研究」を始め、独自の研究成果を多く発表されています。ここ3年近くは、弊研究所とも積極的に情報交換をさせていただいております。
主題については、2015年に新設され中国軍の軍事宇宙を統括することで注目をされてきた「戦略支援部隊(PLA-SSF)」が、この4月に突然組織改編されることとなったことを受けて、設立の趣旨から振り返り、その改組の背景に目を向けようというものです。
内容が深く、中共軍が何を目指しているのかの深掘りに関連し、基本となる統合運用、共同運用、軍令/軍政など、分かりにくい軍事マターについても参加いただいた皆さんからご説明をいただき、理解を深めることができました。
講義内容についてましては、目次ベースの内容を1項に載せておきます。ご参考ください。
また、主題の他、講師が興味を持たれている情報として、上海の長興島にある中華造船所の新型揚陸艦初号機(通称076型)が建造されている場所から、西に約2kmの所にステルス無人戦闘攻撃機(UCAV:GJ-11)の実物大モックアップが設置されている様子や、ロケット軍六十五基地657旅団(大連登沙河)のTEL等が写った衛星写真の紹介がありました。
以下は、今回の主題に係る主なポイントについて、講師の所見等を参考にまとめたものです。(文責:三堀)
【戦略支援部隊(PLA-SSF)の改組】
ポイント1:戦略支援部隊(SSF)は、3つに分割!@2024年4月19日
➡情報支援部隊(成立)、軍事宇宙部隊(調整)、サイバースペース部隊(調整)
ポイント2:旧戦略支援部隊(SSF)は、2015年に実施された習近平による軍再編後にロケット軍と共に新設された部隊。宇宙戦、サイバー戦、電子戦、心理戦、並びに情報偵察、衛星管理、航空宇宙研究開発、運用を担うとされていた。
ポイント3:今回成立した新情報支援部隊は「全軍統合作戦システムを統合して情報支援を正確かつ効率的に実施し、各領域における軍事闘争を保障する」ことがその任務とされている。
ポイント4:軍再編後に新設された部隊がわずか8年で廃止・大幅に改組されることは異例。昨年春から続いたロケット軍の司令員以下の上層部の粛清とともに、今回のSSFの改組(並びに部隊トップの異動の)本当の理由は不明。
ポイント5:問題の根幹にあるのが、情報戦、統合作戦等に対するアプローチの限界をPLAが認識し、改組により情報化と統合化をめぐるそれら課題を解決しようとするものであれば、単なる政治闘争の結果と侮ることはできない。
1.今回の実施内容:
■ テーマ:”中国戦略支援部隊の改組とそれに伴う「情報支援部隊」等の創設”
■ 講師: 田中三郎 氏 (中国軍事問題研究家)
■日時/場所:7月25日(木) 15:00-17:00 @JISSオフィス
■内容:(以下は主な目次)
1.戦略支援部隊創設の立役者
2.戦略支援部隊設立の意図
3.戦略支援部隊改組の背景
・情報化時代における戦争
・システム対抗による統合作戦
・情報支援をめぐる問題
・克服できなかった「縦割り」問題心理戦
4. 情報支援部隊等3部隊の創設とその狙い
・情報支援部隊の発足と巨乾生の動向
・軍事宇宙部隊・サイバースペース部隊の創設と3部隊の任務
・情報支援部隊領導の経歴
5. 現代中国の国防政策
・新興領域戦略能力
・新質戦闘力
6. 米宇宙軍誕生の経緯とその組織
7. おわりに
2.次回予定等 【予定日時の変更】
■ 第3回 : 「SpaceSymposium2024の概要」(仮)
■ 講 師 : 小山 浩氏
三菱電機株式会社 電子システム事業本部 主席技監
■ 日時/場所:9月10日(火)15:30-17:00 @JISSオフィス ⇐計画から変更
;以降の予定は、原則毎月月末の木曜日に開催することとしておりますので、ご参考ください。
以上